無知の知菴 〜悪性リンパ腫罹患者の日常〜

結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫と診断され、経験した事、学んだ事、思う事。

禁煙の方法について自分なりに思う事

この記事の時間軸としては、前回の記事の続きとなります。

 

夕食の時間になった為、妻と娘は帰宅。

食後はネットで禁煙の事について調べまくりました。

 

ネット上の情報と言うのは、正直、信憑性に欠ける物が多いですし、特にタバコ絡みの情報には感情的な要素が影響していると思われる物が多々ありますので、慎重に選別して行きます。

その結果、僕としては、以下の見解を得るに至りました。

 

1:多少の個人差はあれ、物理特性上、禁煙後72時間程度経過すれば、身体的にはニコチンは不要になる。

 

2:しかしながら、禁煙後72時間経過後も「タバコを吸いたい」という感覚が残る事は事実であると推察される。

 

3:上記2の現象は、上記1から考えれば論理的整合性を欠くものであり、このような現象が発生する理由としては、言うなれば「気のせい」ではないかと推察される。

 

4:上記3の「気のせい」は、喫煙にまつわる記憶(食後の一服、コーヒーやアルコールと一緒にタバコを吸う習慣等)が主体であると推察される。

 

5:以上の事から「どの位の期間、禁煙出来れば成功(もう吸いたいと思わなくなる)と言えるか」という問いに対しては、個々人の記憶の捉え方に依存する問題であり「そのような基準値(ないしは閾値)は存在しない」と言える。

 

「で、結局、どうすれば禁煙出来るの?」という点だけで言えば

 

・とにかく72時間はタバコを我慢する。

・その後にタバコを吸いたくなっても「気のせいだから必要ない」と思って吸わない。

 

という事しかありませんね。

 

「根性論かい!」と言われそうなので、若干、補足を。

 

【72時間の禁煙を実現する方法ついて】

・可能な限り寝る。

経験上、睡眠中にニコチンの離脱症状で起きたりする事はありません。

つまり、ニコチンの離脱症状と言うのは大して重くない事の証拠なのですが、この特性を利用し、出来る限り寝ていれば、72時間の禁煙の成功率が高くなると思います。

 

・寝ていない時間は可能な限り風呂に入る。

とは言え、72時間ずっと寝ている訳にも行きません。

そこで、起きている時は、なるべく長風呂に入ると言うのも一つの方法だと思います。

経験上、何故か、お風呂に入っている時にタバコを吸いたくなった事はありません。

この特性を利用しない手は無いでしょう。

これもニコチンの離脱症状の軽さを証明していますね。

 

 

・寝ても風呂に入ってもいない時間は(出来れば有酸素)運動をする。

これも経験上なのですが、運動中、特に有酸素運動をしている時にタバコを吸いたくなった事はありません。

 

ただ、これは「運動は苦手」とか「運動は嫌い」とか言う人もいると思います。

その場合、代替手段として「深呼吸をする」事でも効果があると思います。

 

・禁煙開始は3連休(以上)の時にする

上記の方法を実行するのは、仕事や学校がある場合には難しいと思います。

よって、禁煙を始めるのは3連休以上の休みが取れる時がおすすめです。

 

【タバコが吸いたいのは「気のせい」だと考える事について】

繰り返しになりますが、上記の例からも分かる通り、ニコチンの離脱症状と言うのは大して重いものではありません。

 

これは言い換えれば

 

「よく考えてみたら、本当は大してタバコ(ニコチン)を必要としていないんだけど、何となく吸いたい“気がする”」

 

だけだと言う事です。

 

つまり「タバコを吸いたい」と思うのはイメージの影響が大きい訳ですから、それに対抗するには「いや別にタバコを吸う必要なんか無いよ」というイメージを持つしかありません。

 

そういう意味では「精神論」とか「根性論」である事は否定しませんが、既存のイメージに対抗する為には、マインドセットを変える必要がある訳ですから、それは当然の事であり、特に非合理だとか理不尽だとか言う事は無いと思います。

 

このような僕の考え方に対して

 

「いや、禁煙補助剤使えば良いじゃん。保険適用だし」

 

という意見もあると思います。

 

確かに禁煙補助剤は幾つか登場していますし「禁煙外来」なる診療科に行けば、それらを処方してもらえると思います。

が、はっきり言って、僕は禁煙補助剤の使用には非常に懐疑的な立場です。

 

もの凄くザックリ言うと

 

・禁煙補助剤を使って禁煙出来る人は、禁煙補助剤なんか使わなくても禁煙出来る

・禁煙補助剤の中にはデメリットがメリットを上回ってしまう物がある

 

と思っています。

 

これについては、また別の記事で書きたいと思います。

抗がん剤治療の為にS病院へ入院(そして禁煙開始)

2017年6月14日(水)晴れ。

湿度が低く、気持ちの良い天気です。

 

今日から、化学療法の為、2泊3日の入院です。

 

朝9時40分、身支度を整え、タバコに火をつけます。

これが、人生最後のタバコ(になる予定)です。

 

僕は、おおよそ30年間に亘り、1日1箱くらい吸ってましたんで、20×365×30=219,000本のタバコを吸い続けて来た訳ですが、終わる時は、あっけないもんですね。

 

今回の化学療法に使用される抗がん剤の中には「ブレオマイシン」という薬剤が含まれます。

この薬の副作用の中には、いわゆる「肺毒性」があるのですが、薬剤の使用と共に喫煙を続けた場合、肺線維症等の肺疾患の発生を高める可能性が指摘されています。

 

また、放射線治療も予定されている訳ですが、喫煙は放射線治療の効果を低下させてしまうという理屈が存在します。

さらに、喫煙を続けながら頭頸部への放射線照射を行なうと、2次がんの発生確率を含めた予後が有意に悪化するという研究もあります。

 

実は、僕としては、こう言った論文やデータを鵜呑みにしている訳では無く、公平に見て(例えば母数やランダム化比較臨床試験の結果かどうか等の観点から)、割と懐疑的な立場です。

勿論、だからと言って、これらを真っ向から否定している訳ではありません。

あくまで「参考程度に考えている」という事です。

 

それよりも、最近はタバコを吸う事に本当に不自由する事が多く、正直「面倒臭ぇなぁ」と思っていた事が大きいですね。

あまりの面倒臭さから「吸わないで済むんなら、それに越した事は無いよなぁ」とも思っていましたので、これを機に、禁煙する事にした訳です。

まぁ、今回の事は、良いきっかけになったと考えましょう。

 

さて、病院へ着き、各種手続きを終えると、病室へ案内されます。

今回は、生検で入院した時とは別のゾーンですね。

 

ところで、S病院では、入院患者向けに「有線の無線LANアダプター」という少し奇妙な機械を貸してくれます。

その機械と仕事用のノートPCを繋げば、最低限の仕事が出来る状態は作れる訳で、これは非常に助かりますね。

 

病室で荷物を整理した後、PCのセットアップを終え、メールのチェック等を済ませたあたりで検査に呼ばれます。

 

今日の検査は心臓のエコーと心電図です。

 

今回の化学療法に使用される抗がん剤の中に「ドキソルビシン(アドリアマイシン)」という薬剤が含まれるのですが、この薬には、いわゆる「心毒性」がある事がはっきりと分かっています。

よって、治療前に、心臓の状態を、なるべく正確に把握しておく必要があるものと思われます。

 

しかし「心毒性」やら「肺毒性」やら・・・別の記事で改めて書くつもりですが、抗がん剤は身体に負担がかかりますね。

抗がん剤治療を毛嫌いする人達がいるのも理解出来ます。

 

尚、検査自体は特に(目新しい事も含め)何事も無く、スムーズに終了。

正直「これだけの為に、1日入院する必要なんかあるのか?」とも思いますが、判定とかに多少の時間が必要なのかも知れませんね。

 

しかし、以前の記事「確定診断までの経緯その⑭」でも触れましたが、不整脈は問題にならないんでしょうか?

 

bonyoh.hatenablog.com

 

検査終了後、妻と娘が枕を持って会いに来てくれます。

 

これも以前の記事「左手の痺れ」や「確定診断までの経緯その⑮」で書いた状態ですが、徐々にマシにはなっているものの、到底、万全とは言えない状況です。

いや、本当に長引いてますね。

今回の治療が一段楽したら、主担当医と相談の上、適切な診療科を紹介して貰おうと思います。

 

bonyoh.hatenablog.com

 

しかし、生検で入院した時もそうでしたが、娘が非常に不安そうです。

時折、伏し目がちに

 

「ととは、お首のリンパが腫れてるから・・・」

 

と、しょんぼりした様子で話す娘の姿を見ると、本当に申し訳無い気持ちで、胸が締め付けられます。

病気になるのは仕方の無い部分があるとは言え、まだ3歳の子どもに、こんな思いをさせて良い訳がありません。

 

ゴメンね。

ちゃんと治るように頑張るから、もう少し待っててね。

 

明日からの治療を前に、決意を新たにしました。

口腔ケアの重要性

2017年6月7日(水)曇り。

主担当医から「治療にあたっては口腔外科を受診しておいて下さい」と言われており、今日はS病院の口腔外科へ。

 

前回の記事「病期確定までの経緯その③」にも書きましたが、今回の治療では、化学療法と放射線治療が行われる予定です。

 

化学療法に使用される抗がん剤というのは、基本的に、がん細胞のように代謝が活発な細胞の増殖を抑えるように作用します。

口腔粘膜には代謝が活発な細胞が集まっている為、抗がん剤の使用により、少なからず影響が出ます。

 

尚、毛母細胞も代謝が活発な細胞の一つで、抗がん剤の副作用として脱毛があるのは、この為ですね。

 

今回、化学療法の後に放射線治療も行なう予定ですが、口腔粘膜や唾液腺に近い部分に照射する事になる為、これも口腔内トラブルを引き起こす可能性があり、きちんとケアしておく必要がありそうです。

 

実は、歯と歯茎に関しては、20年ほど前、会社設立当初の頃に、非常に痛い目に遭いました。

 

会社設立時の前後は、いつ寝てるのかも分からないような状況で、24時間体制で仕事をしており、休みなど、あろう筈もありません。

当然、身体に対するケアなど何も行なっていなかったのですが、そんなある日、口の中に我慢出来ない程の強烈な痛みを覚え、仕方無く歯科医院へ行きました。

 

診察の結果、口腔内全体に出血を伴う歯肉炎が見られ、う蝕(虫歯)も多数。

以前に治療した、銀歯を被せてあった歯も、軒並みダメージを受けていました。

 

その際、徹底して治療を行ったのですが、これは色々な意味で割と大変で、本当に懲りましたね。

それ以来、とにかく、これ以上、口腔環境が悪化しないようにケアをしてきました。

 

とは言え、そんなに大それた事をしている訳ではなく、基本的には

 

「寝る前に、音波歯ブラシ、タフトブラシ、歯間ブラシの三本を使って、丁寧に磨く」

 

というだけです。

 

朝食を食べた時には食後に歯を磨きますが、食べなければ磨かず。

昼食後にも磨きません。

 

あとは、定期的なケアとして、半年に一度、歯科医院でクリーニングを行ないます。

もちろん、特殊なクリーニングなどではなく、保険適用の範囲で大丈夫です。

 

たったこれだけで20年間も無事な訳ですから、これは本当におすすめの方法です。

 

ただし、僕の場合、間食をする事が皆無に等しいので、もしかすると、それが大きいのかも知れません。

 

さて、S病院の口腔外科に行くと、まずは歯茎の状態を見る為に、歯周ポケットの深さを金属の棒で測られます。

 

これ、チクチクして、地味に痛くて不愉快なイメージがあったんですが、今回は意外と大丈夫でした。

これまで何回か測られた時は、歯茎が腫れている状態だった為に痛かっただけなのかも知れません。

 

診察の結果、歯周ポケットが深い所はあったものの、全体としては、大きな問題は指摘さませんでした。

 

ただ、口の中の形のせいか、両頬の内側に「噛み癖」があるらしく、食事の際に口の中を噛まないように気を付けるように言われます。

また、治療中は、歯間ブラシの使用は避けた方が良いと言われました。

さらに、熱い物は、きっちりと冷ましてから食べるように指導されます。

 

とにかく「口の中に傷が付くような事は極力避けるように」という事ですね。

 

それから、前述の通り、僕は例年、6月と12月に定期的な歯のクリーニングをしているのですが、入院前にやっておいた方が良いかどうか聞くと「勿論やっておいた方が良い」との事。

 

クリーニングはS病院でも出来るとの事ですが、予約には「少し時間が掛かるかも知れない」との事だったので、とりあえず、いつもクリーニングをお願いしている歯科医院にスケジュールを確認してみる事にします。

 

オフィスに着き、いつもの歯科医院へ電話。

すぐに予約が取れた為、クリーニングは、こちらの歯科医院でやる事にしました。

 

2日後の金曜日、いつもの歯科医院へ。

 

これまでは、レモン味の塩(?)みたいな物を噴射された後、色んな器具でクリーニングが行われましたが、今回は塩の噴射は無いまま、クリーニングは終了しました。

 

歯科衛生士の方に「何故、塩を使わなかったのか」と聞いてみると「非常に状態が良かったので、塩を使う必要が無かった」と言われます。

 

また

 

「とても良い状態ですから、この調子で、お口の中をキレイに保って下さいね!」

 

と、すごく嬉しそうに言われます。

 

そういう姿勢で話をしてくれる歯科衛生士の方の姿を見ていると、何だか、こちらも嬉しくなりますし、ちゃんと継続してケアしようという気持ちになりますね、本当に。

 

仕事に対する姿勢、かくあるべし、ですな。

病期確定までの経緯その③ 病期及び治療方針確定

2017年6月5日(月)晴れ。

骨髄穿刺とPET-CTの結果を聞きに、S病院の血液内科へ向かいます。

 

今日は、妻から「みんなで話が聞きたい」と言われたので、3人揃って行きました。

 

診察室に入り、いつものように近況を報告。

その後、本題に入ります。

 

「今日はね、骨髄生検と、PET-CTの検査結果が出てますんで、それをお伝えします」

 

まず、PET-CTの所見としては、以下の通り。

 

・左深頚部、副神経、鎖骨窩リンパ節にかけて高集積が散見される

脾臓及び骨髄に異常集積は指摘できない

・その他の部位に悪性リンパ腫を疑う異常集積は指摘できない

・肺に異常影は認めない

 

また、骨髄生検の結果としては、骨髄への浸潤も見られないとの事。

 

とりあえず、ホッとしました。

一般的に想定し得る範囲内、かつ、かなりマシな状況だと言えると思います。

 

結論としては

 

・病期:限局期(Ⅱ期)

予後不良因子:無し

 

との判定です。

 

悪性リンパ腫予後不良因子に関しては、ネットで調べていると、色々な項目が出て来ます。

僕としては、正直「幾つか当てはまるなぁ」と思っていたので、主担当医の「予後不良因子無し」という判定には、少し驚きました。

 

その時は、話の流れ的に「何故Ⅱ期で予後不良因子無しと判定したのか」につて、あまり詳しい事は聞けませんでした。

が、おおよそは、日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドライン等に沿う判断なのではないかと思います(いずれ、ちゃんと話を聞き、改めて本ブログで解説する予定です)。

 

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン

 

さて、現状を受け、主担当医としては

 

・化学療法(抗がん剤/ABVD療法):2クール実施

放射線治療:20Gy照射

 

という2つの治療を行なう方針であると告げられます。

 

これは、2017年6月の段階で、限局期ホジキンリンパ腫に対する治療としては、最も侵襲が低い治療法だと言えると思います。

ちなみに、先程の「日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン」でも、2013年の段階では「ABVD療法4クールと30Gyの放射線照射」が標準治療とされています。

 

また、この説明を聞いた上で、僕としては最も関心の高かった「悪心・嘔吐対策」について、主担当医に方針を聞きました。

これについては、以下の方針である事が確認出来ました。

 

抗がん剤投与時】

・イメンドカプセル(125mg):抗がん剤投与開始の1時間程度前に経口摂取

・アロキシ静注及びデカドロン静注抗がん剤投与開始直前に静脈注射

 

抗がん剤投与後】

イメンドカプセル(80mg):抗がん剤投与翌日から2日間、朝食後に経口摂取

・デカドロン錠剤(4mg):抗がん剤投与翌日から3日間、朝昼食後に経口摂取

 

素人が言うのも何ですが、初期段階の悪心・嘔吐対策としては、ほぼ満点ではないかと思われます。

 

尚、この対策が奏功しなかった場合にどうするかについても、一応、主担当医に聞いておきました。

それに対する回答内容も概ね想定通りなので、とりあえず悪心・嘔吐対策については安心して良さそうです。

 

僕が何故、悪心・嘔吐対策に神経質になるのかと言うと、これまでの経験上、食物が経口摂取出来なくなると、がん治療は上手く行かなくなると確信しているからです。

また、そこまでの話でななく、単に食が細くなるだけでも、治療成績は下がると考えています。

 

これについて、特にエビデンスを調べた訳ではありません。

が、個人的な経験や、複数の医師及び医療関係者に対する聞き取り、またネットで調べた結果等からも、恐らく間違った考えではないと思っています。

 

・・・ここまでの話で、耳慣れない単語が、急に幾つも出て来ました。

「ABVD」「Gy」「イメンド」「アロキシ」「デカドロン」とかって何だよ?ってなりますよね。

 

これらについては、今後の話においても非常に重要ですので、次回以降の記事で、改めて説明したいと思います。

 

治療は、まず化学療法から行います。

初回は2泊3日の入院で行い、各種モニタリングで問題が無いようであれば、その後は通院で治療を行なう予定だそうです。

 

入院は6月14日(水)に決定。

いよいよ、始まりますね。

病期確定までの経緯その② S病院のクリニックでPET-CT

2017年6月2日(金)晴れ。

今日は、PET-CTを受けに、久し振りにS病院のクリニックへ向かいます。

 

S病院自体にはPET-CTの装置は無く、検査は必ず、こちらで行なうのだそうです。

 

S病院でPET-CTについて説明を受ける際「とにかく絶対に遅刻しないように」と、きつく言われています。

 

昔はさておき、近年は滅多に遅刻なんてしないんですが、何故か今日に限って、色々と不可抗力があり、本当に久し振りに遅刻しそうで、焦ります。

ついには、クリニックへ向かう途中、先方から電話が掛かって来て「今日はもう検査は出来ない」と言われる始末・・・・・いや、これは下手を打ちました。

 

改めて予約を取り直すように電話で指示を受けていると、横から

 

「今どこ?え?あと10分で来れる?」というイラついた声が聞こえて来ます。

 

電話口の方に

 

「あの、すみません。今から10分で来られますか?」と聞かれ

「大丈夫だと思います」と答えると

「少々お待ち下さい」と言われた後

「では、すぐに来て下さい」と言われます。

 

慌てて行って、何とか間に合いました。

皆様、本当に申し訳ありません。

 

さて、これだけ時間に厳しく言われるのには、ちゃんとした理由があります。

それは、PET-CTの撮像原理に関係しています。

 

今回のPET-CTでは、腫瘍細胞の活性状況の撮像を目的としています。

 

まず前提として、腫瘍細胞は正常な細胞の数倍から20倍程度のブドウ糖を消費するとしう特徴があります。

つまり、ブドウ糖の集積具合を見れば、がん細胞の活動の様子が分かる訳です。

 

ブドウ糖の集積具合を見ようとした時、例えばブドウ糖に放射同位元素を標識としてくっつけ、それを撮像すれば良さそうに思えます。

が、ブドウ糖は、身体の中で解糖されて、すぐにバラバラになってしまう為、集積の具合を上手く撮影する事が出来ません。

 

そこで、解糖で代謝されない、ブドウ糖に似た物質「FDG」に、半減期が適度に短く、扱い易い放射性同位体「18F」を標識としてくっつけた「18F-FDG」が開発されました。

この物質は、腫瘍細胞に上手く蓄積されます。

 

で、PET-CTでは、この「18F」の放出するガンマ線を検出して撮像する訳ですね。

簡単に言うと、がんの部分が光ります。

 

尚、18Fの半減期は、約110分です。

 

PET-CTの撮影では「18F-FDG」を注射してから1時間ほど安静にし、全身に行き渡ってから撮影しなければりません。

つまり、それだけで半減期の半分を必要とする訳です。

で、その後に撮影する訳ですから、薬剤は可能な限り、投与直前に調合する必要がある訳ですね。

 

さて、撮影着に着替えると、まずは体温と血圧、酸素濃度等を測定します。

その後、処置ゾーンに案内され「18F-FDG」を注射されます。

 

注射が終わると、小さく仕切られたブースの中にあるリクライニングチェアで安静にするように指示されます。

また、500mlのペットボトルの水を飲むように言われました。

 

ブースの中にはテレビ等も無く、注意書きには、本等を読んだり、スマホ等を触るのも駄目だと書いてあります。

簡単に言えば「黙って寝てろ」という事ですね。

 

仕方が無いので、目をつぶり、寝ながら待っていると、うつらうつらし始めた頃、ようやく名前を呼ばれました。

 

撮影の前に、トイレに行って尿を出しておくように言われます。

尚、その際「男性も座ってして下さい」と言われます。

 

「18F-FDG」に含まれる放射線は2.2mSvで、これは我々が1年間に自然界から受ける放射線の量と、ほぼ同じです。

そう考えると、尿の飛沫による被曝など大した量では無さそうに思えるのですが、医療機関で働く人の側から見ると、案外無視出来ない量なのかも知れません。

 

その後、撮影自体はすぐに終了。

撮影終了後は、先ほどのブースで再度30分ほど待つように言われます。

同意書に「初回撮像の後、時間をおいて再度撮像することがある」とあるが、その為の待機なんですかね。

 

結局、何事も無く、そのまま検査は終了。

お会計をして、会社に向かいます。

 

尚、これまでの撮像費用は以下の通り。

 

MRI(1.5T/造影剤有):5,910円

・CT(胸部/16列以上64列未満マルチスライス/造影剤無):4,620円

・CT(胸腹部/64列以上マルチスライス/造影剤有):8,787円

PET-CT(18F-FDG使用):27,795円

 

ちなみに、一般的なレントゲン撮影は1,000円強といったところです。 

 

うーん、PET-CTは格段に高い。

人間ドックなんかで、保険適用外で撮影すると10万円もかかるっていう事ですね。

病期確定までの経緯その① S病院で骨髄穿刺

2017年5月31日(水)晴れ。

とても気持ちの良い天気です。

 

今日は、S病院で骨髄穿刺を受ける日ですね。

 

骨髄穿刺に関しては、ネットで体験談等を読むと「無茶苦茶痛い」という人と「そんなに痛く無い」という人に分かれており、果たしてどちらなのか分かりません。

 

僕の場合、主担当医からは

 

「これはね、申し訳無いんですけど、痛いんですよ」

 

と事前に言われていますので、まぁ、痛いんでしょうね、きっと。

 

とは言え、です。

骨髄穿刺には特に入院の必要は無く、終わった後、そのまま歩いて帰って良いし、仕事にも行けるとは聞いていました。

 

また、入院して行なう必要のあった生検の時の局所麻酔では、少なくとも術中の痛みは皆無だった経験もあり、心のどこかで「まぁ、痛いとしても、無茶苦茶って痛いって訳じゃないんだろうな」と(希望的観測を含め)高を括っていました。

 

血液内科の受付を済ませると、受付の方に「処置室の方の受付に行って下さい」と指示を受けます。

指示通り、受付を行ない、しばらく待っていると、名前を呼ばれ、処置室に入ります。

 

処置室の中は、カーテンで仕切られた簡素なベッドが多数並んでいます。

 

僕も、そんなベッドの中の一つに案内され、まずは看護師さんから、体温、血圧、酸素濃度等の測定を受けます。

その後、処置着(?)に着替え、主担当医が来るのを待つように言われます。

 

しばらくして、主担当医が登場。

 

「今日は、骨髄穿刺と言って、腰の所の骨にね、針を刺して、骨髄を採りますね」

 

ベッドにうつ伏せになり、まずは局所麻酔をかけて行きます。

 

「なるべく痛く無いようにね、麻酔をかけました。ただ、骨の中っていうのは、ちょっと麻酔が効きにくいんで、痛かったら遠慮無く言って下さいね。麻酔薬は、まだ沢山ありますんで。では、骨に針を刺して行きますね」

 

骨盤の右後ろ辺りに針が刺され、そのままゴリゴリと骨の中に押し込まれて行きます。

当たり前ですが、割と強い力が必要なようですね。

 

しばらくすると、針がスッと入ったような感じがあり、主担当医から

 

「はい、針が入りました。これから骨髄液を抜いて行きますね」

 

と言われます。

確かに、何か吸われている感じです。

 

尚、痛みはあるかと聞かれますが、ここまでの所・・・あまり、ありません。

・・・良かった・・・。

 

「はい、これで半分終わりましたからね。ここまでは順調ですね」

 

・・・半分?

 

「半分」というのは、あとシリンジ1本分、抜くという事か?などと考えていると、何やら別の針を刺している様子。

そして再び、針がゴリゴリと骨の中に押し込まれて行きます。

しかし、今回はなかなか進みません。

 

「・・・今回は、なかなか進みませんね。最初のやつと何か違うんですか?」

 

と聞くと

 

「うーん、そうですね。太さが違うんで、ちょっと入りにくいですね・・・」

 

と言いながら、ゴリゴリし続けます。

そして、しばらくした時の事。

 

!!!!!!!!!!!

 

「いってえ!!!」

 

針が刺されていた場所に、突然、激痛が走りました。

 

「あー、痛いですか。すみません、ちょっと我慢して下さい」

 

という医師の声と共に、看護師さんから身体を押さえ付けられつつ

 

「動かないで!我慢して下さい!!」

 

と鋭い語気で言われます。

いや、そんな事言われても、これは・・・無理っすよ。

 

「うぅぅぅぅぅ・・・こ・・・れは・・・痛い・・・っ!!」

 

誇張では無く、身体中から脂汗が吹き出します。

痛みの「質」は、申し訳無いんですが、上手く表現出来ません。

ただ、何と言うべきか、特殊な痛みとかではなく、本当に純粋な、鋭い痛みです。 

 

「ちょっと麻酔を追加します。看護師さん、麻酔」

 

と言い、麻酔を追加。

うーん、もはや効いてるのかどうか分かりませんが、若干、楽になったか。

そして、ほどなく骨髄穿刺は終了。

 

「すみません、痛かったですね。でも、今これをやっておいた方が良いですから」

 

「・・・・あの、先生、1本目と2本目って、何が違うんですか?」

 

あまりの違いに、説明を求めます。

 

「1本目は、骨髄液を採取しました。ただ、骨髄液だけだと正確な判断が出来ないんで、2本目は骨髄組織を採取しました。骨髄生検です」

 

いや、ほんと、マジで「聞いてないよォ」って言いたい気分・・・・・。

 

その後、穿刺した箇所に1時間ほど自分の体重をかけながら止血し、ようやく解放されました。

患部に防水テープを貼られ「本日は入浴を控えるように」との事。

 

事前に言われていた通り、確かに入院の必要も無いですし、歩いて帰れますし、仕事にも行けますが・・・穿刺した箇所は、響くように痛いですね・・・。

 

事前の説明を信じて、午後に客先での打合せを入れておいたのを後悔しました。

「仕事は休んだ方が良いよ」とか言っておくレベルじゃないか?これ。

 

尚、この日は、僕の49回目の誕生日。

一生、忘れないでしょうね。

社会保険について

確定診断を受け、医療保険の内容確認や手続きを進めるのと平行して、社会保険の方も手続をしなくてはなりません。

 

まずは「高額療養費制度」のおさらいです。

 

「高額療養費制度」とは、一つの世帯が、1ヶ月の間に、医療機関や薬局等の窓口で支払った金額が所定の限度額を超えた場合、申請をすれば、その超過分が「高額療養費」として支給される制度です。

但し、入院時の食費負担や差額ベッド代等は、この制度の対象に含まれません。

 

自己負担の限度額は、年齢や所得区分、また加入している健康保険の種類によって変わりますが、僕の場合(70歳未満・健保)の場合、以下の様になっています。

 

【適用区分ア:標準報酬月額83万円以上】

 252,600円+(医療費ー842,000円)×1%
 ※多数回該当のとき140,100円

 

【適用区分イ:標準報酬月額53万円〜79万円】

 167,400円+(医療費ー558,000円)×1
 ※多数回該当のとき93,000円

 

【適用区分ウ:標準報酬月額28万円〜50万円】

 80,100円+(医療費ー267,000円)×1
 ※多数回該当のとき44,400円

 

【適用区分エ:標準報酬月額26万円以下】

 57,600円

 ※多数回該当のとき44,400円

 

【適用区分オ:住民税非課税者】

 35,400円
 ※多数回該当のとき24,600円

 

「多数回該当」とは、過去12ヶ月以内に3回以上、この上限額に達した場合の事で、4回目から、上限額が適応区分に応じて引き下げられます。

 

これに関連し「健康保険限度額適用認定証」という物があります。

 

高額医療費制度では、一旦、医療費は全て自分で払い、後日、申請する事で、超過分が払い戻されます。

「健康保険限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提出しておけば、窓口負担が自己負担限度額を超えた段階で、医療費の支払の必要が無くなります。

 

実は、自宅の近くに、会社で加入している健康保険組合の事務所があります。

そこで、妻に「健康保険限度額適用認定証」の取得をお願いしました。

会社経由で申請すると、色々と時間が掛かりそうだったのですが、直接、健康保険組合の事務所で手続きをする事で、申請翌日(2017年5月30日)に認定証を受け取る事が出来ました。

 

ここまでは「法定給付」の話です。

「法定給付」とは、健康保険法で定められた給付ですね。

 

また、これとは別に「付加給付」があります。

「付加給付」とは、加入している健康保険組合が法定給付以外に支給する、独自の給付です。

 

一般的に、健康保険の種類としては「社会保険」と「国民健康保険」の二つに大別されます(他に「共済組合」や「後期高齢者医療制度」等があります)。

僕の場合、法人に勤務していますんで「社会保険」に加入しています。

 

で「社会保険」は「協会けんぽ」と「組合健保」の二つに大別されます。

協会けんぽ」は「全国健康保険協会」という団体が運営しており「組合健保」は企業が単独、もしくは共同で設立・運営する健保組合です。

 

そして、前述の「付加給付」は、各「組合健保」が独自に設定する給付で「協会けんぽ」には存在しません。

 

僕の会社の場合「組合健保」に加入していますので「付加給付」が存在します。

僕の会社が加入している健康保険組合の「付加給付」には色々なものがあるのですが、今回の僕のケースの場合「一部負担還元金」が関係して来ます。

 

「一部負担還元金」の内容としては、高額医療費を除き、一つの医療機関に対し、1ヶ月の間に20,000円を超える自己負担額の支払があった場合、そこから20,000円を控除した額を100円未満切り捨てで支給する(ただし算出額が1,000円未満の場合は不支給)というものです。

 

簡単に言えば、高額医療費制度との組み合わせにより、僕が1ヶ月に支払う医療費の上限は20,999円になるという事ですね。

 

尚、給付は自動的に行なわれ、被保険者の手続き等は不要との事。

これは本当に有難い話で、組合健保に加入させて頂いている事に感謝です。

 

しかし、3回連続で数字の多い話になると、さすがに、ちょっと疲れますね。