無知の知菴 〜悪性リンパ腫罹患者の日常〜

結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫と診断され、経験した事、学んだ事、思う事。

幼稚園を休園する事(と周囲の反応)について

2017年6月26日(月)曇り。

 

仕事が一段落した午後2時頃、昼食を食べに外出していた際、妻から携帯に電話が掛かって来ました。

 

「ごめんね、とと。あまりにも悔しくて・・・」

 

と、泣きながら話します。

一体どうしたのかと聞くと、おおよそ下記のような概要でした。

 

実は、この週末(25〜26日にかけて)妻と相談し、しばらくの間、娘には幼稚園を休園してもらおうという事になりました。

 

当たり前の事ですが、幼稚園に行くと、娘は時々、病気を貰って来ます。

そういう経験もしながら、子供は自らの免疫力を高めて行く訳で、ある意味、必要な事だと言っても過言ではありません。

 

が、今は事情が事情です。

 

抗がん剤治療に伴う骨髄抑制により、僕は免疫力が非常に下がった状態になります(と言うか、既にそうなっています)。

このような状態である時、娘を経由して菌やウイルス等が家に持ち込まれると、僕の日和見感染リスクは格段に上がってしまいます。

 

娘の幼稚園休園は、そのリスクを少しでも下げる為の、我が家としての決断です。

 

この日、妻は、幼稚園に対し、9月末までの休園を申し入れました。

現在の治療計画等を鑑みて、そのくらいになれば、僕の免疫力は問題無いレベルに回復しているというのではないか、という予測を立てた上での申請です。

 

妻はまず、担任の先生に事情を話しました。

担任と副担任の先生には事情を理解して頂き、手続きを進める事になりました。

 

手続きの一環として、園長先生に対して事情説明を行なったようなんですが、その際、以下のようなやり取りとなったらしいです。

 

尚、以下は妻からの伝聞でしかありませんので、正確性を欠くものである事は否めませんが、可能な限り客観的な描写を心がけています。

 

園長「事情は分かりましたが、休園というのは、ちょっと・・・」

妻 「どういう事ですか?」

園長「だって、お父さんは会社に行かれるんですよね?」

妻 「はい」

園長「つまり、お父さん自身が、色々な場所で感染するリスクがある訳ですよね?」

妻 「そうですね」

園長「お母さんも、お買い物なんかに出掛けられるんですよね?」

妻 「はい」

園長「つまり、お母さんも色々な場所で感染するリスクがある訳ですよね?

妻 「そうですね」

園長「だったら、娘さんが休園したって、感染リスクに大差ないんじゃないですか?」

妻 「大人は注意深く行動すれば感染リスクを下げる事が出来ます。

   でも子どもの場合、そういうリスクコントロールは難しいと思います。

   実際、入園して2ヶ月の間で、手足口病と胃腸風邪をもらって来ました。

   これらを避けるだけでも日和見感染のリクスは相当に下がると思いますが」

園長「・・・そうですかねぇ。大体、本当に幼稚園で感染したんですかねぇ?」

妻 「同級生の他の子も一緒に罹患してますので、おそらく幼稚園での感染です」

園長「・・・でもねぇ、本当に休園までする必要があるんですかねぇ?」

妻 「あの、休園してはいけないんですか?」

園長「いや、もちろんダメと言ってる訳じゃないんですよ」

妻 「では何が問題なんですか?」

園長「いや、休園だと月謝も止めないといけませんし、だったら休園よりも・・・」

妻 「・・・・・・・・・・・」

 

まさかの「カネ」?

その後も、妻としては、確認の為に色々と突っ込んだらしいんですが、要するに「カネ」の話だとしか思えない、と。

 

「そんなんやったらカネ払うたるわ!(妻は関西人です)」

 

と、喉まで出かかったらしいんですが、何とか耐えたそうです。

 

とにかく、集団生活の責任者である園長の、感染に対する無神経さに呆れたとの事。

また、僕の命に対する危険性が、月謝以下の問題であるとされた事が、あまりにも屈辱的だったという事でした。

 

また、同日、ある知人の方から

 

「うーん、でも、確かに休園ってのは、ちょっと大げさかもね。実際の所、そこまで神経質になる必要は無いと思うし」

 

と言われたらしいです。

驚くべき事に、この方は看護師資格を持っている方です。

この発言も、妻にとっては相当ショックであった様子。

 

少し話が飛びますが、僕が医療関係の仕事に関わっている事は、このブログでも何度か触れていると思います。

その中の一つに「日本環境感染学会の総会・学術集会」があります。

 

日本環境感染学会では、毎年1回、医師や看護師等の医療従事者向けに、各種展示やセミナー等を開催しています。

学会で取り扱うテーマには様々なものがあるんですが、その中でも最大の関心事は、毎年ダントツで「手指衛生」。

 

もう少し詳しく言うと「どうすれば手指衛生の遵守率が上げられるか」なんです。

毎年ですよ?

 

つまり、医療従事者の感染に対する意識なんて、その程度だと言う事です。

病院(特に大きな病院)に行くと「医療従事者に『手指衛生はしましたか』?と聞いて下さいね」という内容のポスターが、よく貼ってありますよね。

あれも証拠の一つです。

 

まぁ、仕事だとね・・・正直、面倒臭いでしょうし、手も荒れるでしょうから、理解出来ない事はないんですけどね。

 

ただ、だからといって、こちらとしては、それを容認する訳には行きません。

 

「それ以上、何かゴチャゴチャ言って来るようだったら、俺が直接話すよ。嫌な思いして大変だったね。ありがとう」

 

そう言って、電話を切りました。

 

上記のような連中には、まともに関わるだけ時間と労力の無駄です。

こちらとしては、自らの意思と立場を毅然と表明するのみです。

また、そこで「空気を読む」必要もありません。

 

何せ、命に関わる問題ですからね。