無知の知菴 〜悪性リンパ腫罹患者の日常〜

結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫と診断され、経験した事、学んだ事、思う事。

ABVD療法について

これまでお伝えしている通り、今回、僕が受ける化学療法は「ABVD療法」と呼ばれるものです。

今回、僕が罹患したのは「ホジキンリンパ腫」ですが、この病期に対する「標準治療」と呼ばれる治療方法には、幾つかのものが存在します。

 

「標準治療」とは、ザックリ言うと

「ある状態にある疾病に対して現時点で最良の結果が得られた事が科学的に証明されている治療方法」

の事です。

 

で、以前の記事「病気確定までの経緯その③」にも書いた通り、僕の場合は

 

「ABVD療法2クール+放射線20Gy照射」

 

となっています。

 

「ABVD」とは、使用される4種類の、いわゆる「抗がん剤」の頭文字を取ったもので、それぞれ以下の薬剤を示します。

 

A:ドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシン)

  ※アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質

B:ブレオマイシン塩酸塩

  ※アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質

V:ビンプラスチン硫酸塩

  ※植物アルカロイド

D:ダカルバジン

  ※アルキル化剤

 

これらの抗がん剤に制吐剤や鎮痛剤を組み合わせた一連の薬剤のセットを2週間に1度、投与します。

 

最初に投与した日を「1日目」とすると、その2週間後、つまり「15日目」に2回目の投与を行ない、これを「1クール」もしくは「1サイクル」と呼びます。

 

僕の場合は2クールですから、合計で4回投与する訳ですね。

より詳細に言うと、僕の場合の1回の投与内容は以下の通りです。

 

尚、この内容は、医療機関や個々人により異なります。

下記はあくまで、S病院で僕(体表面積1.7〜1.8㎡)が受けた「ABVD療法」です。

 

1:制吐剤「イメンドカプセル(125mg)」を服用

※服用後1時間ほど時間を置く

↓ 

2:制吐剤「デカドロン注射液(13.2mg)」及び「アロキシ静注(0.75mg)」を点滴

※所要時間約10分

3:抗がん剤「アドリアシン注用(43mg)」(ドキソルビシン塩酸塩)を点滴 

※クレンメ全開で滴下/所要時間約5分

4:抗がん剤「ブレオ注射用(17mg)」(ブレオマイシン塩酸塩)を点滴

※所要時間約30分

5:抗がん剤「エクザール注射用(10mg)」(ビンプラスチン硫酸塩)を点滴

※クレンメ全開で滴下/所要時間約5

6:抗がん剤「ダカルバジン注用(650mg)」(ダカルバジン)を点滴

※所要時間約40分

7:生理食塩水(その日の状態で量は変動)を点滴

※点滴ルート内や留置針付近の血管の抗がん剤を洗い流す目的/所要時間は20〜30分

 

合計の所要時間は、薬剤交換等の時間を含め、大体、1回あたり3時間〜3時間30分くらいかかります。

 

尚、抗がん剤投与の翌日以降の内服薬として、以下の制吐剤が処方されます。

・イメンドカプセル(80mg):1日1回/朝食後/2日分(2錠)

・デカドロン錠(4mg):1日2回/朝・昼食後/3日分(6錠)

 

ここまでで1セットですね。

 

以前の記事「病期確定までの経緯その③」でも書きましたが、僕が抗がん剤治療において最も神経質になっていたのは悪心・嘔吐対策です。

 

bonyoh.hatenablog.com

  

仮に上記の制吐剤だけでは悪心・嘔吐が防げない場合、主担当医は以下の薬剤も処方する予定だったようです。

プリンペラン(メトクロプラミド)

・ノバミン(プロクロルペラジン

 

尚、抗がん剤同様、制吐剤にも作用機序別に様々な種類があり、今回の記事で登場した薬剤は、それぞれ以下の分類になります。

・イメンド(アプレピタント):NK1受容体拮抗薬

・デカドロン(デキサメタゾン):副腎皮質ステロイド

・アロキシ(パロノセトロン):5-HT3受容体拮抗薬

プリンペラン(メトクロプラミド):ドーパミン受容体拮抗薬

・ノバミン(プロクロルペラジン):フェノチアジン系抗精神病薬 

 

実は、このブログを書き始めた当初、抗がん剤や制吐剤について、一つ一つ、なるべく分かりやすく(出来れば池上彰さんばりに)解説しようと思っていました。

が、現段階では、時間的な問題もあり、一旦、諦めます・・・すみません。

 

でも、余裕のある時に、いつか必ず実現してみたいです。

 

さて、結果として、僕の場合、2クール/計4回のABVD療法で明確な「吐き気」を感じた事はありませんでしたし、実際に吐く事もありませんでした。

 

抗がん剤治療中は、診察・問診や各種治療等の度に、医師や看護師、薬剤師さん達から、必ず「吐き気はどうですか?」と聞かれます。

僕としては、上記のような状態でしたから「全く無いです!」と元気に答えていたんですが、その度に、全員から「あー、そうですか・・・良かったですね・・・」と、何と言うか「ちょっと残念」な感じで言われたのが意外でした。

 

好意的に解釈すれば「普通は何らかの症状が出る筈なのに、珍しいねぇ」と、単にレアケースに戸惑っているだけのようにも思えますし、悪く解釈しようとすれば・・・・・いや、止めておきましょうね、そんな事は無い筈です。

 

まぁ、それだけ、医療従事者にとっても「抗がん剤治療における悪心・嘔吐問題は非常に重要」だって事で。

 

ただ、この記事を書いている時点(2017年8月10日/ABVD療法は終了)で思うのは

「もし、3クール以上、この治療が続いていたら、吐いたかも知れない」

という事。

 

細かい事は、今後の記事で触れて行く事になると思いますが「たかが2クールのABVD療法」とは言え、決して「楽」とは言えませんでしたね。